ステントの微細造形

メーカー:Fluence Technology

概要と特長

ステントは、狭くなった血管を広げて人体の血流と循環を再確立するために使用される医療用チューブです。素材は主にニチノールチューブが用いられ、レーザー加工で材料の一部を除去することで、非常に複雑なメッシュ構造を形成します。

 

加工プロセスで生じる熱的な負荷により、切断面に沿って溶融物が形成される可能性があるため、一般的に後処理の工程が必要となり、時間とコストが増加します。この後工程は、フェムト秒レーザーを使用することで解決でき、ステント製造における精度、切断速度、歩留まりのを改善することができます。

 

フェムト秒レーザー ― あらゆる埋め込み型医療デバイス製造の柔軟性を向上

世界保健機関(WHO)の最近の報告では、心臓病は世界の主な死因の一つであり、その発症率は急速に増加していることが明らかにされています。心臓病を治療するための最も一般的な治療法の一つが、血流を維持するために血管ステントと呼ばれる小さなデバイスを体内へ埋め込む方法です。

ステントはこの20年ほどで大幅に進化しており、その多くはレーザー切断とレーザー溶接によって製造されています。このページでは、ステントに使用されるさまざまな材料と、1台のレーザー光源を使用して必要なすべての材料を加工する方法を紹介します。

 

ステント – 命を救う小型デバイス

血管ステントの出現以来、心臓病は低侵襲手術で治療されてきました。報告によると、米国だけで毎年965,000件以上の血管形成術が行われています。この手術では、バルーンを使用して血管を膨張させます。この多くの場合に、ステントの挿入を伴う経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われます。

 

ステント用材料

体内に埋め込まれるステントには、満たさなければならないさまざまな要件があります。第一に、組織や血液との反応を引き起こさない生体適合性のある素材で作られていることが重要です。第二に、ステントは移植後長期間体内で使用されるため、弾力性と耐久性が必要です。最後に、目的に適合し、さらに破片が蓄積しないような高精度の加工が必要です。

 

従来から金属が使用されてきましたが、最も一般的なのは、ステンレス鋼、ニチノール(形状記憶ニッケルチタン合金)、またはコバルトクロム合金です。これらの材料は、高い耐摩耗性、衝撃強度、延性、および負荷を十分に吸収する特性を備えています。

 

長期的な有効性を確保するためのもう1つの方法は、適切な機械的特性を持ちながら、動脈内で徐々に溶解するステントを使用することです。これらは生体吸収性(または生体再吸収性)ステントとして知られています。通常これらは、ただちに95%が無害に溶解するマグネシウム合金、またはポリ乳酸(PLA)やその類似材料などのポリマーから作られます。

 

レーザーによるステント製造

長年にわたり、ステント製造には、編組(レーザー溶接による接合を含む)、マイクロインジェクション成形、3Dプリンティング、レーザー切断など、多くの方法が開発されてきました。しかしながら、ポリマー構造と金属構造の両方で高精度の要求を満たすのはレーザー切断だけです。

 

すべての材料を1台のレーザー光源で加工可能

レーザー切断によるステント製造では、幾何学的再現性、高速スループット、後処理の最小化といった高い要求のすべて重要です。使用するさまざまな種類の材料(金属とプラスチックの両方)を考慮すると、複数の材料を1台で切断できる光源を持つことには明白な利点があり、生産機械コストを最小限に抑えることができます。

 

フェムト秒パルスをはじめとする超短パルスレーザーによるレーザー切断の主な利点の1つは、実質的に入熱がないため、金属の熱影響部(HAZ)が形成されず、熱に敏感なポリマーの溶融も回避できることです。フェムト秒パルスレーザーの相互作用時間は熱拡散時間よりもはるかに短いため、熱切断ではなくコールドアブレーション切断が行われ、あらゆる材料に対してよりクリーンで正確なソリューションとなります。

 

このようなアプリケーションの成功には、短パルス、高いピークエネルギーピーク、カスタマイズ可能な繰返し周波数といった特性を兼ね備えたフェムト秒レーザーが必要です。適切なレーザーを使用すると、熱に敏感で最も困難な素材の一つである、生分解性PLAでもステント製造が可能です。

 

超高速レーザーを使用した材料加工には、ダイシング法とレーザーアブレーション法の2つがあります。それぞれに独自の利点があり、超高速レーザーは両方の方法に対応できます。

 

フェムト秒レーザーによるステント製造まとめ

血管/非血管ステントにより、重篤な病状を最小限の侵襲手術で治療できるようになりました。これらは耐久性のある生体適合性材料で作られ、製造には精密なレーザー加工が必要です。

 

超高速パルスレーザーは、正確なバースト光を利用してステントを滑らかに、かつ極めて高い公差で切断でき、またレーザー表面パターニングによりインプラントの統合を向上させます。フェムト秒レーザーは金属ステント製造に使用できることはもちろん、ポリマーステントの唯一のソリューションです。フェムト秒レーザーは、高いスループットと柔軟性を提供にし、材料に関係なくステントメーカーにとって好適なツールです。